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ショッピング枠現金化商法の問題点

ショッピング枠現金化商法で暗躍しているのが、海外決済代行業者といわれているクレジットカード包括加盟店です。現金化のようなグレーゾーンの悪質業者の温床になっています。この間題は、債務を抱えた人が不要な債務を抱えることになってさらに事態を悪化させる、つまり消費者被害を広げないといった視点で解決せざるを得ないようです。しかし繰り返しますが、正規のルートで借りられないからこのような逃げ道に迷い込むのであって、これは信用収縮の一面です。この事態に政府も手をこまねいているわけではありません。

政府広報をはじめ、消費者庁、金融庁はホームページで啓発活動を展開しています。関連の日本貸金業協会、日本クレジット協会も啓発活動を展開しています。しかし、その啓発活動は、①債務を増やし支払い困難になりかねない、②カード規約違反に問われクレジットカードが利用停止になる恐れがある、という二点に尽きます。確かにこれで思いとどまる消費者もいるかもしれませんが、抜本的な解決につながることはありません。それよりも意地悪な見方をすれば、日本貸金業協会が啓発するのは本来、業界で融資できたかもしれない顧客を本来のルートに戻すこと。

さらに、ショッピング枠現金化を使って債権内容が悪くなっては困る、といったことが本音としてあるかもしれません。日本クレジット協会についても、きちんと払ってくれるのなら利用してもいいけれど、本音は債権内容の悪化は避けたいといったところにあるのかもしれません。かなり意地悪な見方をしましたが、本気で根絶を図るには、消費者信用関連二元規制を一本化する以外にありません。

行政の対応の不合理

ショッピング枠現金化商法が適法かどうかというと、これは見事なまでにグレーです。お金を貸しているというのであれば、間違いなく出資法違反ですから刑法犯です。しかし彼らはお金を貸すわけではありません。割賦販売法に違反するところも思いつきません。出資法違反で業者が逮捕されたケースもありますが、後が続いていないところを見ると、おそらく不起訴になったものと思います。質の悪い業者の場合は、ショッピングだけさせてお金を振り込まないといったこともあるようですが、ここまでくれば詐欺です。利用した消費者側から見れば消費者被害ということになります。

しかし、こういった悪い業者でなぜクレジットカードが使えるのか、といった素朴な疑問が湧きます。国内でも海外でも構いません。自分でどこかの店に行ってブランド品か何かを買って、それを質店に持ち込むのも現金化ですが、これはカード会員の責任で行われている行為であって、それを仲介する者はいません。この場合、その代金をカード会社に払うつもりがなければ詐欺罪が成立しそうですが、その代金を払った場合は、せいぜい会員規約にある所有権の留保の権利を侵しただけです。カード会社も実害はありませんから、何も言わないと思います。

所有権留保というのは、割賦販売法第7条にある規定です。自動車は、登記制度があるので、この規定を有効に使うことができます。それ以外の商品では、例えばレストランで食事をして、それが所有権留保だといわれてもどうにもならないので、最近はあまり会員規約で見かけることはなくなりました。話を戻します。自分でどこかのお店で買い物をし、それを質店に持ち込む行為は、正規のクレジットカード加盟店であればカード会社にも加盟店にも何も問題はありません。ところがショッピング枠現金化の業者は、そういった正規の手続きでクレジットカードの加盟店になっているわけではありません。

なぜショッピング枠現金化は起きるのか

現金化はクレジットカードの与信枠の中で行われます。クレジットカードには、たいていショッピング枠とキャッシング粋がありますが、現金化を利用するのは、ほぼ確実にキャッシング粋がいっぱいの人です。現金が必要であってキャッシング粋があるなら、金利がそれほど違わないのですからキャッシングすればいいのであって、ショッピング枠を利用する合理性は何もありません。ショッピング枠現金化がどのような仕組みかというと、ネットで通信販売の形をとって有形ほぼ無価値のものを買う形式をとります。その買い物をした商品について現金をキャッシュバックするというものです。

大きな箱の中にビー玉一個とか、何か書いてある紙とか、そういったものを利用することが一般的です。一時ネットオークションのサイトがよく利用されていました。あるとき一万円札を売っているのを見たことがあります。一万円にはマニア垂誕の付加価値のあるものもあるそうですが、そうではないようでした。一万円を一万五〇〇円で売っていて、急ぐ場合は振り込みでもOKとあるのです。最近ではカード会社のギフトカードとか、コンビニで使えるクオカードを売っているのを見たことがあります。どちらも数百円程度上乗せした金額で売っていました。

ある商品には「返品可、入金額の九〇%」とありました。この種の金券類は発行元から買うと定価ですが、街中の金券ショップで買うと定価より数%安いのが常識です。言うまでもなく、ここでいくつか例示したのは、どれもショッピング枠現金化です。では、なぜショッピング枠現金化を利用する人がいるかということですが、キャッシング粋がないのに現金を必要としていて、かつキャッシングで与信を受けることができないからです。もしショッピング枠を利用して買い物をして、それが一〇〇%で買い戻ししてもらえて、それをリボにして返済するのであれば、キャッシングとショッピングの金利差だけショッピング枠を使った方が得です。

ところが現金化で戻してもらえるのは、かなり良心的なところで最大八五%ぐらいですから、買い物をした段階で相当のロスがあります。要するに一〇万円の買い物をして八万五〇〇〇円を手にして一〇万円を払うということなのです。消費者行動は必ずしも合理的ではなく、不合理なことの方が多いものですが、これはあまりにばかげた行動といわざるを得ません。現金化が利用されるのには、もう一つ理由があります。それはショッピングとキャッシングで法規制が異なることです。言うまでもなく貸金業法の総量規制と割賦販売法の支払い可能見込額です。この二つの限度額を低い方に合わせて同じにしてしまえば、現金化を使おうと思ってもできません。

それと現実的にはあまり考えられないことですが、貸金の専業者だけから総量規制いっぱいまで借り入れている債務者がいたとします。その人の情報は貸金業者だけが見ることができて、ショッピングの専業者は見ることができません。この人がショッピング専業者の発行するクレジットカードを持って、ショッピング枠現金化を利用すると、支払い可能見込額まで利用することが可能です。この二つが重なると、おそらく自己破産しか救済方法はないぐらいの債務になるものと思います。かつて個人信用情報の業界タテ割りが多重債務を生んだと批判されましたが、行政のタテ割りは多重債務者を生む可能性をはらんでいるのです。

ショッピング枠現金化とは何か

ショッピング枠現金化とは、クレジットの後払いという特性を生かして、負債付きの商品を手に入れ、それを質入れ・転売などの方法で現金化することをいいます。個品割賦でもクレジットカードでも可能ですが、貸金業法改正後に目立つのはクレジットカードを利用したものです。最も原始的な仕組みは、クレジットカードでパソコンやデジタルカメラといった換金性の高い商品を購入し、それを質店やそういった商品の買い取りを専門にしているブローカーに持ち込んで現金化します。商品は、生鮮品のような腐敗するようなものは不適格で、劣化しないことが条件です。一時は、新幹線の回数券チケットが大人気でした。

大量枚数を購入すると割引率が高くなっているので、買い取ったチケット店が転売するときに正規の料金よりもかなり割安で提供できるからです。ただし、このような利用が危険な取引であることは、カード会社も経験則でわかっていますから、回数券チケットでのクレジットカード利用はかなり絞り込まれています。消費社会を生きていく上では、お金が不可欠です。おそらく現金化の最も古い形は江戸時代まで遡ります。貨幣経済が庶民にまで浸透した江戸時代は、宵越しの銭を持たなくても仕事があるいい時期もありましたが、社会の最下層の人々は相当貧しい生活をしていました。

彼らを相手にしたいろいろな種類の金貸しが蔓延しました。いつの時代からかはわかりませんが、その日に使う鍋釜や布団まで、賃料を取って持たない人に日常品をレンタルする「損料貸し」といわれる業者が江戸市中で生まれました。一泊一日あたりいくらで貸すわけですから、鍋釜や布団の購入金額よりはるかに安いのは当然です。これは貸し手の立場ですが、借り手の立場からすると、安い賃料でとりあえず一泊一日、その商品を手に入れることができます。すると今度は、その商品を質草にお金を貸す業者が現れました。商品を貸し出すところとお金を貸すところはセットだったケースもあるといいます。これが損料貸しです。

借りた商品を質に入れ、お金を手にして、期日までにお金を返して質草を引き出し、それを返すことができれば問題なしです。ところが、なかなか思ったとおりにはいきません。ずいぶんトラブルが多かったといわれます。クレジットが使われ始めた時代にも、同じようなことが行われていました。クレジットを取り扱うのが月賦百貨店などの一部に限定されていた戦前から戦後にかけてですが、当時は時計、カメラ、貴金属、それにオーディオ製品がその対象でした。クレジットを使って後払いで買ったものを質草にお金を手にするというのは、それほど難しい理屈ではなくて、誰でも思いつくことであって、昔からあった方法なのです。

与信基準が3Cから数値化

二〇〇八年の法改正で最も大きな変化は、クレジットの与信基準が「クレジットの3C」から数値基準に変わったことです。クレジットが始まってから法改正前までの間、申し込みを断る場合は「当社の総合的判断で」という枕詞が付きましたが、「改正後は法律の定めで」という断り文句になりました。こういった断り文句が可能になったのは、個人信用情報の個人信用情報機関への登録と利用が義務づけられ、クレジットを利用するすべての消費者の個人信用情報が登録されて、申し込みの際など法律が規定するときに利用されるからです。これは物販のクレジットも貸金の分野でも同じです。その結果何が起きたかというと、会社によって多少の違いはあるにせよ、クレジット会社の与信基準はほぼ同一になりました。

会社の大小は関係ありません。つまり、規模の利益が従来以上に強く働くようになったのです。大きなクレジット会社は、法規制の枠の中で与信していればコンプライアンス上も何も問題がなく利益が挙げられるのに対して、中小規模では限られた中で利益の捻出がそれだけ困難になりました。地方の商店街を基盤にした日専連や日商連といった中小小売商団体のクレジット事業が、この法改正によって壊滅的な打撃を受けたことでもそれは明らかです。中小はもっと高い金利で貸せばいいではないか、という疑問が湧くかもしれませんが、金利水準は大手も中小も同じです。

物販クレジットのリボや分割払いの金利は、十分高い水準にありますし、貸金にしても法定金利が物販クレジットとほぼ同水準ですから、高利のヤミ金以外に金利差はないのです。二〇〇七年の貸金業法の改正前までは、物販のリボの金利はどこも一三%前後でしたが、法改正後は、ほぼ一五%に足並みを揃えました。キャッシングの金利が下がったので、その分の収益を物販の物販クレジットに求めたためです。しかしこれだけ低金利の時代に、金利が上がったのは物販のクレジットだけです。

かつては物販のクレジットとキャッシングの金利には二倍以上の差があったのが、貸金業法の改正によって差は一気に締まり、ほとんどの会社は物販クレジット一五%、キャッシング一八%となっています。会社によっては、どちらも一八%というところもあります。市場ベースでほぼ同一の金利で行われている与信について、違う法律で規制する意味はまったくない時代になった、ということができると思います。与信基準が数値化されて個人信用情報機関は完全に、法律が求める個人信用情報のストック機関になりました。一応株式会社の形はとっていますが、役所の指導によって競争が避けられていますから、組織的には国営化して特殊法人にしても違和感はありません。