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信用収縮マーケットのニューカマー①

クレジット会社がエステサロンとの契約を打ち切った結果、新たな与信業者の参入の余地が生まれました。過去には消費者金融会社がエステの契約に貸金をセットするようなこともあったのですが、こういった疑似クレジットは改正法によって完全に個品割賦とみなされ、業を営むには経産省への登録が必要要件となりました。経産省への登録業者になると、割賦販売法の規定に沿った業務運営をしていないと行政指導の対象になるということですから、これまでのようなビジネス展開はできません。したがってそのような業者のエステへの取り組みもあまり目立たなくなりました。

このところ目立つのは、海外決済代行業者の進出です。海外決済代行業者は海外のカード会社と包括加盟店契約を結ぶカード決済の代行会社です。駅ビルはデベロッパーが一括してカード加盟店契約を結び、店子の小売店が使えるようにしていますが、それの応用形です。仕組みを簡単に説明しておきましょう。海外決済代行業者は、海外のアクワイアラーとクレジットカードの包括加盟店契約を締結します。その契約を海外のその国の加盟店に提供している分には何も問題はないのですが、彼らはそれを日本の加盟店に提供します。

この場合の日本の加盟店がどのようなところかというと、基本的には通信販売の加盟店を対象にしていますが、出会い系サイトなどが代表格です。ショッピング枠現金化、パチンコ必勝法、競馬情報、アダルトサイトといったところがかなりあります。出会い系サイトは、ポイントを購入して、そのサイトで出会った異性とメールのやりとりをするたびに、一回一〇〇円とか二〇〇円の料金がかかるものです。この代金をクレジットカードで決済するわけですが、出会えたと思った異性が実はサクラで、いくらメールのやりとりをしても出会うことはないので、「出会えない系サイト」といわれています。

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倒産による消費者被害とクレジット会社の被害②

クレジット契約のリスクは、そのままクレジット会社のリスクでもありました。エステのような継続して提供される役務を提供する加盟店が倒産すると、事後処理の負担があまりに大きく、リスクが高かったのでした。エステサロンが発行するチケットは、前払いの金券のようなものです。商品券のような本物の金券の場合は、資金決済法によって前受金の半分を供託することになっているのですが、エステは対象になつていません。特商法の規定でも、前受金の保全措置がある場合は、その保全先を表示すれば済みます。ここにもタテ割りの法律規制の弊害があります。

エステのように自店が提供するサービスについてのみ利用できるチケットの場合は、自家発行型といって登録不要だからです。こういったリスクがあるのと、二〇〇八年に割賦販売法が改正されたことによって、エステサロンはクレジット会社から締め出されることになりました。それまでエステサロンでよく利用されていたのは個品割賦でした。チケットのまとめ売りは金額が大きくなるので、クレジットカードでは間に合わなかったことも理由の一つです。その個品割賦を扱っていた信販会社がエステサロンから一斉に手を引いた結果、クレジットカード会社までも手を引いてしまいました。

エステのトラブルがクレジットカードに及ぶことに危機感を持ったからです。その結果、きちんと経営してきた固定客を持った優良エステサロンまでクレジットで販売することができなくなりました。ショッピング枠現金化は消費者を対象とした信用収縮現象でしたが、エステは加盟店における信用収縮ということができると思います。ちなみにエステのトラブルは、度重なる特商法の改正と二〇〇八年の割賦販売法によって悪質な店が排除された結果、悪質な店は売り上げを上げることができずに大幅に減少しました。もちろんクレジット会社が手を引いたことも大きな原因です。

倒産による消費者被害とクレジット会社の被害①

エステの契約は、チケットのまとめ売りが一般的に利用されていました。一回の施術が一万円だとして、それを一五回分受けるチケットが、一五万円ではなく一〇万円といった販売方法です。買う方にすれば割安で契約することができますし、売る方にすればまとまった金額が入って、さらにその顧客は継続的に通ってくれる可能性もあるので、魅力的な販売方法です。もっとも、来店してもしなくても前払いでもらってしまうのですから、後はどうでもいいということになりがちです。こういった販売方法をとると、エステサロンには前受金が貯まります。

前受金は、これから提供する施術に充当されるものですが、一度財布に入ったお金はどんなお金であろうと自分のものになるのと同じで、本来の趣旨から外れたことに使われてしまうことが多いのです。不動産や株の投資に使われたり、そもそも経営自体が乱脈だったりします。こうなるとエステサロンは倒産に至り、こういった事態に陥ると、未消化のチケットを持った顧客はそれ以上のサービスの提供を受けることができなくなります。クレジット契約をしていた場合は、当然のことながら払う気など起こりません。

逆に「金返せ」となります。法整備がなかった時代は、こういった言い分は通りませんでしたが、今は完全に通ります。そこでクレジット会社の対応としては、当該顧客が受けられるはずだったエステの施術を別のエステに振り替えたり、それに合意が得られない場合は返金する、などの対応をせざるを得ませんでした。顧客からすれば当然といえば当然のことなのですが、このルールが決まるまではすっきりした対応はなかなかできませんでした。

借用収縮による新たなマーケットの創出

特商法分野の代表的な取引である訪問販売は、過去、クレジットの成長に合わせて伸びてきました。それ以外の取引もクレジットと提携することによって売り上げを伸ばしました。加盟店与信という消費者信用にはあるまじき与信姿勢で審査した結果、売上はどんどん伸びますが、トラブルもどんどん発生する。しかし、クレジット会社のリスクはほとんどない、といった現象です。かなり乱暴な売り方をしてもクレジット会社が与信してくれるので、歯止めが利かなかった、ともいえます。その背景に、加盟店が売買解除を合意解除に持ち込んで、クレジット会社に返金する仕組みがありました。特定継続的役務提供もよくトラブルを起こしました。その代表格であるエステのトラブルは三つに分けられます。

一つは勧誘時のものです。キャッチセールスといわれている手法が多くとられました。街角で”お試し”をうたって勧誘し、エステの施術台に乗れば契約するまで帰さないという手法です。当然、セールスマンに歩合を払う必要がありますから、エステティシャンも契約を取るのに必死です。さらにその歩合分がありますから、安い契約では済みません。結構な金額のエステが、主に個品割賦を使って契約されていたのです。こういった場合、まさに契約させられたといっても過言ではありません。気分よく契約したわけではありませんから、一年分とか二年分の契約であっても行く気にならないのも仕方ありません。

その結果、解約したくなるのですが、それには応じません。それで消費者トラブルになったのです。泣き寝入りして払った人も多いと思いますが、各地の消費者センターにはこういったトラブルがたくさん持ち込まれる結果になりました。このような経緯があったので、エステが特商法の規制に入って、キャッチセールスが訪問販売の一形態として規制されるようになったのです。二つ目は、効能・効果やあるいは医療行為にかかる施術に関することです。「絶対に痩せます」と言われて契約したが話と違う、というのが典型的なトラブルです。また、脱毛等の場合は医療行為であるにもかかわらず、医者でもないエステティシャンが施術をして身体に危険が及んだ、といったケースもあります。

当然これらは論外であって、エスティックサロンの経営者の資質の問題です。では、よいエステサロンとはどういったところか、ということになりますが、中小でも地域に密着して長年契約しているところは、固定客がついています。そこに来る客はエステに何を求めているかというと、端的な言葉では「癒やし」だそうです。エステの施術を受けてお肌が椅麗になるとか、どこか細くなるとかいう効果はもちろん期待します。しかし、固定客がついて人気のあるエステティシャンは、結局は人に癒やしを与えられる人、つまり人間力の優れた人が多いようです。カウンセリングを受けて、何か安心した、落ち着いた気持ちになるのと同じです。効能・効果や擬似医療行為を行うようなエステサロンは、エステ本来の機能に期待できないので極端に走るようです。こういったエステサロンとクレジット会社がつき合うと、支払い停止の抗弁を受けることになります。

壊滅的な打撃を受けた特商法分野の加盟店

特定商取引に関する法律(特商法)は、一九七六年に割賦販売法から独立する形で制定された法律です。クーリングオフといえば特商法といったイメージがありますが、わが国の法律で最初に導入されたのは一九七二年の改正割賦販売法からです。特商法制定当時は、割賦販売法と特商法(当時は「訪問販売等に関する法律」といいました)の所管課は、経産省の消費経済課(現在はいくつかに分かれています)で同じでした。

一九七六年の特商法制定時に規制の対象となつていた取引は、①訪問販売、②通信販売、③連鎖販売、の三類型でした。連鎖販売は現代では、マルチ商法あるいはネットワークビジネスといわれているものです。無限連鎖講(ネズミ講)は、一九七八年に「無限連鎖講の防止に関する法律」が制定されて明確に禁止されています。特商法の連鎖販売取引は、規制の内容は厳しいですが、禁止されているわけではありません。

その後、特商法は何度も改正が繰り返されて、規制の対象とする取引も増えていきました。一九九六年に電話勧誘販売が追加になり、一九九九年改正では特定継続的役務提供が対象になりました。役務というのは、エステティックや英会話教室のようなサービス商品のことです。二〇〇一年には業務提供誘引販売取引が追加になって、規制対象の取引類型は制定当初の三から六類型へと増えています。さらに、いわゆる「押し買い」(訪問購入)といった取引が二〇一三年に追加になりました。

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