記事一覧

借用収縮による新たなマーケットの創出

特商法分野の代表的な取引である訪問販売は、過去、クレジットの成長に合わせて伸びてきました。それ以外の取引もクレジットと提携することによって売り上げを伸ばしました。加盟店与信という消費者信用にはあるまじき与信姿勢で審査した結果、売上はどんどん伸びますが、トラブルもどんどん発生する。しかし、クレジット会社のリスクはほとんどない、といった現象です。かなり乱暴な売り方をしてもクレジット会社が与信してくれるので、歯止めが利かなかった、ともいえます。その背景に、加盟店が売買解除を合意解除に持ち込んで、クレジット会社に返金する仕組みがありました。特定継続的役務提供もよくトラブルを起こしました。その代表格であるエステのトラブルは三つに分けられます。

一つは勧誘時のものです。キャッチセールスといわれている手法が多くとられました。街角で”お試し”をうたって勧誘し、エステの施術台に乗れば契約するまで帰さないという手法です。当然、セールスマンに歩合を払う必要がありますから、エステティシャンも契約を取るのに必死です。さらにその歩合分がありますから、安い契約では済みません。結構な金額のエステが、主に個品割賦を使って契約されていたのです。こういった場合、まさに契約させられたといっても過言ではありません。気分よく契約したわけではありませんから、一年分とか二年分の契約であっても行く気にならないのも仕方ありません。

その結果、解約したくなるのですが、それには応じません。それで消費者トラブルになったのです。泣き寝入りして払った人も多いと思いますが、各地の消費者センターにはこういったトラブルがたくさん持ち込まれる結果になりました。このような経緯があったので、エステが特商法の規制に入って、キャッチセールスが訪問販売の一形態として規制されるようになったのです。二つ目は、効能・効果やあるいは医療行為にかかる施術に関することです。「絶対に痩せます」と言われて契約したが話と違う、というのが典型的なトラブルです。また、脱毛等の場合は医療行為であるにもかかわらず、医者でもないエステティシャンが施術をして身体に危険が及んだ、といったケースもあります。

当然これらは論外であって、エスティックサロンの経営者の資質の問題です。では、よいエステサロンとはどういったところか、ということになりますが、中小でも地域に密着して長年契約しているところは、固定客がついています。そこに来る客はエステに何を求めているかというと、端的な言葉では「癒やし」だそうです。エステの施術を受けてお肌が椅麗になるとか、どこか細くなるとかいう効果はもちろん期待します。しかし、固定客がついて人気のあるエステティシャンは、結局は人に癒やしを与えられる人、つまり人間力の優れた人が多いようです。カウンセリングを受けて、何か安心した、落ち着いた気持ちになるのと同じです。効能・効果や擬似医療行為を行うようなエステサロンは、エステ本来の機能に期待できないので極端に走るようです。こういったエステサロンとクレジット会社がつき合うと、支払い停止の抗弁を受けることになります。

壊滅的な打撃を受けた特商法分野の加盟店

特定商取引に関する法律(特商法)は、一九七六年に割賦販売法から独立する形で制定された法律です。クーリングオフといえば特商法といったイメージがありますが、わが国の法律で最初に導入されたのは一九七二年の改正割賦販売法からです。特商法制定当時は、割賦販売法と特商法(当時は「訪問販売等に関する法律」といいました)の所管課は、経産省の消費経済課(現在はいくつかに分かれています)で同じでした。

一九七六年の特商法制定時に規制の対象となつていた取引は、①訪問販売、②通信販売、③連鎖販売、の三類型でした。連鎖販売は現代では、マルチ商法あるいはネットワークビジネスといわれているものです。無限連鎖講(ネズミ講)は、一九七八年に「無限連鎖講の防止に関する法律」が制定されて明確に禁止されています。特商法の連鎖販売取引は、規制の内容は厳しいですが、禁止されているわけではありません。

その後、特商法は何度も改正が繰り返されて、規制の対象とする取引も増えていきました。一九九六年に電話勧誘販売が追加になり、一九九九年改正では特定継続的役務提供が対象になりました。役務というのは、エステティックや英会話教室のようなサービス商品のことです。二〇〇一年には業務提供誘引販売取引が追加になって、規制対象の取引類型は制定当初の三から六類型へと増えています。さらに、いわゆる「押し買い」(訪問購入)といった取引が二〇一三年に追加になりました。

ショッピング枠現金化商法の問題点

ショッピング枠現金化商法で暗躍しているのが、海外決済代行業者といわれているクレジットカード包括加盟店です。現金化のようなグレーゾーンの悪質業者の温床になっています。この間題は、債務を抱えた人が不要な債務を抱えることになってさらに事態を悪化させる、つまり消費者被害を広げないといった視点で解決せざるを得ないようです。しかし繰り返しますが、正規のルートで借りられないからこのような逃げ道に迷い込むのであって、これは信用収縮の一面です。この事態に政府も手をこまねいているわけではありません。

政府広報をはじめ、消費者庁、金融庁はホームページで啓発活動を展開しています。関連の日本貸金業協会、日本クレジット協会も啓発活動を展開しています。しかし、その啓発活動は、①債務を増やし支払い困難になりかねない、②カード規約違反に問われクレジットカードが利用停止になる恐れがある、という二点に尽きます。確かにこれで思いとどまる消費者もいるかもしれませんが、抜本的な解決につながることはありません。それよりも意地悪な見方をすれば、日本貸金業協会が啓発するのは本来、業界で融資できたかもしれない顧客を本来のルートに戻すこと。

さらに、ショッピング枠現金化を使って債権内容が悪くなっては困る、といったことが本音としてあるかもしれません。日本クレジット協会についても、きちんと払ってくれるのなら利用してもいいけれど、本音は債権内容の悪化は避けたいといったところにあるのかもしれません。かなり意地悪な見方をしましたが、本気で根絶を図るには、消費者信用関連二元規制を一本化する以外にありません。

行政の対応の不合理

ショッピング枠現金化商法が適法かどうかというと、これは見事なまでにグレーです。お金を貸しているというのであれば、間違いなく出資法違反ですから刑法犯です。しかし彼らはお金を貸すわけではありません。割賦販売法に違反するところも思いつきません。出資法違反で業者が逮捕されたケースもありますが、後が続いていないところを見ると、おそらく不起訴になったものと思います。質の悪い業者の場合は、ショッピングだけさせてお金を振り込まないといったこともあるようですが、ここまでくれば詐欺です。利用した消費者側から見れば消費者被害ということになります。

しかし、こういった悪い業者でなぜクレジットカードが使えるのか、といった素朴な疑問が湧きます。国内でも海外でも構いません。自分でどこかの店に行ってブランド品か何かを買って、それを質店に持ち込むのも現金化ですが、これはカード会員の責任で行われている行為であって、それを仲介する者はいません。この場合、その代金をカード会社に払うつもりがなければ詐欺罪が成立しそうですが、その代金を払った場合は、せいぜい会員規約にある所有権の留保の権利を侵しただけです。カード会社も実害はありませんから、何も言わないと思います。

所有権留保というのは、割賦販売法第7条にある規定です。自動車は、登記制度があるので、この規定を有効に使うことができます。それ以外の商品では、例えばレストランで食事をして、それが所有権留保だといわれてもどうにもならないので、最近はあまり会員規約で見かけることはなくなりました。話を戻します。自分でどこかのお店で買い物をし、それを質店に持ち込む行為は、正規のクレジットカード加盟店であればカード会社にも加盟店にも何も問題はありません。ところがショッピング枠現金化の業者は、そういった正規の手続きでクレジットカードの加盟店になっているわけではありません。

なぜショッピング枠現金化は起きるのか

現金化はクレジットカードの与信枠の中で行われます。クレジットカードには、たいていショッピング枠とキャッシング粋がありますが、現金化を利用するのは、ほぼ確実にキャッシング粋がいっぱいの人です。現金が必要であってキャッシング粋があるなら、金利がそれほど違わないのですからキャッシングすればいいのであって、ショッピング枠を利用する合理性は何もありません。ショッピング枠現金化がどのような仕組みかというと、ネットで通信販売の形をとって有形ほぼ無価値のものを買う形式をとります。その買い物をした商品について現金をキャッシュバックするというものです。

大きな箱の中にビー玉一個とか、何か書いてある紙とか、そういったものを利用することが一般的です。一時ネットオークションのサイトがよく利用されていました。あるとき一万円札を売っているのを見たことがあります。一万円にはマニア垂誕の付加価値のあるものもあるそうですが、そうではないようでした。一万円を一万五〇〇円で売っていて、急ぐ場合は振り込みでもOKとあるのです。最近ではカード会社のギフトカードとか、コンビニで使えるクオカードを売っているのを見たことがあります。どちらも数百円程度上乗せした金額で売っていました。

ある商品には「返品可、入金額の九〇%」とありました。この種の金券類は発行元から買うと定価ですが、街中の金券ショップで買うと定価より数%安いのが常識です。言うまでもなく、ここでいくつか例示したのは、どれもショッピング枠現金化です。では、なぜショッピング枠現金化を利用する人がいるかということですが、キャッシング粋がないのに現金を必要としていて、かつキャッシングで与信を受けることができないからです。もしショッピング枠を利用して買い物をして、それが一〇〇%で買い戻ししてもらえて、それをリボにして返済するのであれば、キャッシングとショッピングの金利差だけショッピング枠を使った方が得です。

ところが現金化で戻してもらえるのは、かなり良心的なところで最大八五%ぐらいですから、買い物をした段階で相当のロスがあります。要するに一〇万円の買い物をして八万五〇〇〇円を手にして一〇万円を払うということなのです。消費者行動は必ずしも合理的ではなく、不合理なことの方が多いものですが、これはあまりにばかげた行動といわざるを得ません。現金化が利用されるのには、もう一つ理由があります。それはショッピングとキャッシングで法規制が異なることです。言うまでもなく貸金業法の総量規制と割賦販売法の支払い可能見込額です。この二つの限度額を低い方に合わせて同じにしてしまえば、現金化を使おうと思ってもできません。

それと現実的にはあまり考えられないことですが、貸金の専業者だけから総量規制いっぱいまで借り入れている債務者がいたとします。その人の情報は貸金業者だけが見ることができて、ショッピングの専業者は見ることができません。この人がショッピング専業者の発行するクレジットカードを持って、ショッピング枠現金化を利用すると、支払い可能見込額まで利用することが可能です。この二つが重なると、おそらく自己破産しか救済方法はないぐらいの債務になるものと思います。かつて個人信用情報の業界タテ割りが多重債務を生んだと批判されましたが、行政のタテ割りは多重債務者を生む可能性をはらんでいるのです。

ショッピング枠現金化とは何か

ショッピング枠現金化とは、クレジットの後払いという特性を生かして、負債付きの商品を手に入れ、それを質入れ・転売などの方法で現金化することをいいます。個品割賦でもクレジットカードでも可能ですが、貸金業法改正後に目立つのはクレジットカードを利用したものです。最も原始的な仕組みは、クレジットカードでパソコンやデジタルカメラといった換金性の高い商品を購入し、それを質店やそういった商品の買い取りを専門にしているブローカーに持ち込んで現金化します。商品は、生鮮品のような腐敗するようなものは不適格で、劣化しないことが条件です。一時は、新幹線の回数券チケットが大人気でした。

大量枚数を購入すると割引率が高くなっているので、買い取ったチケット店が転売するときに正規の料金よりもかなり割安で提供できるからです。ただし、このような利用が危険な取引であることは、カード会社も経験則でわかっていますから、回数券チケットでのクレジットカード利用はかなり絞り込まれています。消費社会を生きていく上では、お金が不可欠です。おそらく現金化の最も古い形は江戸時代まで遡ります。貨幣経済が庶民にまで浸透した江戸時代は、宵越しの銭を持たなくても仕事があるいい時期もありましたが、社会の最下層の人々は相当貧しい生活をしていました。

彼らを相手にしたいろいろな種類の金貸しが蔓延しました。いつの時代からかはわかりませんが、その日に使う鍋釜や布団まで、賃料を取って持たない人に日常品をレンタルする「損料貸し」といわれる業者が江戸市中で生まれました。一泊一日あたりいくらで貸すわけですから、鍋釜や布団の購入金額よりはるかに安いのは当然です。これは貸し手の立場ですが、借り手の立場からすると、安い賃料でとりあえず一泊一日、その商品を手に入れることができます。すると今度は、その商品を質草にお金を貸す業者が現れました。商品を貸し出すところとお金を貸すところはセットだったケースもあるといいます。これが損料貸しです。

借りた商品を質に入れ、お金を手にして、期日までにお金を返して質草を引き出し、それを返すことができれば問題なしです。ところが、なかなか思ったとおりにはいきません。ずいぶんトラブルが多かったといわれます。クレジットが使われ始めた時代にも、同じようなことが行われていました。クレジットを取り扱うのが月賦百貨店などの一部に限定されていた戦前から戦後にかけてですが、当時は時計、カメラ、貴金属、それにオーディオ製品がその対象でした。クレジットを使って後払いで買ったものを質草にお金を手にするというのは、それほど難しい理屈ではなくて、誰でも思いつくことであって、昔からあった方法なのです。

与信基準が3Cから数値化

二〇〇八年の法改正で最も大きな変化は、クレジットの与信基準が「クレジットの3C」から数値基準に変わったことです。クレジットが始まってから法改正前までの間、申し込みを断る場合は「当社の総合的判断で」という枕詞が付きましたが、「改正後は法律の定めで」という断り文句になりました。こういった断り文句が可能になったのは、個人信用情報の個人信用情報機関への登録と利用が義務づけられ、クレジットを利用するすべての消費者の個人信用情報が登録されて、申し込みの際など法律が規定するときに利用されるからです。これは物販のクレジットも貸金の分野でも同じです。その結果何が起きたかというと、会社によって多少の違いはあるにせよ、クレジット会社の与信基準はほぼ同一になりました。

会社の大小は関係ありません。つまり、規模の利益が従来以上に強く働くようになったのです。大きなクレジット会社は、法規制の枠の中で与信していればコンプライアンス上も何も問題がなく利益が挙げられるのに対して、中小規模では限られた中で利益の捻出がそれだけ困難になりました。地方の商店街を基盤にした日専連や日商連といった中小小売商団体のクレジット事業が、この法改正によって壊滅的な打撃を受けたことでもそれは明らかです。中小はもっと高い金利で貸せばいいではないか、という疑問が湧くかもしれませんが、金利水準は大手も中小も同じです。

物販クレジットのリボや分割払いの金利は、十分高い水準にありますし、貸金にしても法定金利が物販クレジットとほぼ同水準ですから、高利のヤミ金以外に金利差はないのです。二〇〇七年の貸金業法の改正前までは、物販のリボの金利はどこも一三%前後でしたが、法改正後は、ほぼ一五%に足並みを揃えました。キャッシングの金利が下がったので、その分の収益を物販の物販クレジットに求めたためです。しかしこれだけ低金利の時代に、金利が上がったのは物販のクレジットだけです。

かつては物販のクレジットとキャッシングの金利には二倍以上の差があったのが、貸金業法の改正によって差は一気に締まり、ほとんどの会社は物販クレジット一五%、キャッシング一八%となっています。会社によっては、どちらも一八%というところもあります。市場ベースでほぼ同一の金利で行われている与信について、違う法律で規制する意味はまったくない時代になった、ということができると思います。与信基準が数値化されて個人信用情報機関は完全に、法律が求める個人信用情報のストック機関になりました。一応株式会社の形はとっていますが、役所の指導によって競争が避けられていますから、組織的には国営化して特殊法人にしても違和感はありません。

特商法の行政処分規定とは

かつて銀行系カード会社に分割払いやリボルビングが認められていなかった時代に、法律の定義の範囲外である二回払いを商品として開発したことがあります。ショッピングの代金をローンに振り替えるサービスというものもありました。これらは法律の抜け穴ですが、自主規制が強く働く時代であれば、おそらくできなかったものと思います。しかし、これらの今でいう潜脱商品は、消費者ニーズを満たしたものでもありました。今回の法改正は消費者被害防止にはいい法律かもしれませんが、これからどんなニーズが出てくるかわからない、気まぐれに変わる消費者ニーズには間違いなく対応しないと思います。

このような規制の形になったのは、クレジットでいろいろなトラブルが発生したことによるのはいうまでもありません。消費者団体からの意見が強く反映されたものともいえます。こんな経験をしたことがあります。消費者庁の議論が盛んだったころに、とある会合に参加する機会を得たので出席してみました。民主党の担当議員が来ていて消費者庁の骨格について説明があったのですが、ほとんどの出席者は消費者団体といわれている組織に所属する人たちでした。消費者保護政策には、国民生活センターのPIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)の情報が重要な役割を果たします。

これは、地方自治体の消費者窓口に寄せられる相談や苦情を、国民生活センターが一元化しているデータベースです。国民生活センターは消費者庁に二〇一三年に統合されましたが、そういった構想についても説明されていました。いささか場違いだったかもしれませんが、「PIO-NETの情報はトラブルの拡大に重要なものであるから、なるべく早く開示すべきというのはもちろん、当該会社には個別に開示すべきではないか」と質問してみました。民主党案では、そこまでは考えていないようでした。が、出席していた消費者団体の人たちからは「あり得ない」といったつぶやきが聞こえてきました。

いろいろな取引や商品について、PIO-NETでの情報が積み重なると公表されたり、行政指導があったりするのですが、当該の会社が事前にわかればより早い対応が可能です。必ずしも当該の会社がすべての情報を確認できているとは限らないからです。それがなぜ「あり得ない」なのかは理解しかねましたが、これは消費者行政の仕事にも反映されています。特商法の行政処分規定は、過去にはまったく名目だけだったのですが、急激に増えています。

この要因には、権限移譲された都道府県が機能しだしたということも挙げられます。とはいっても、このように数字としてまとめられると、それが仕事の成果になりがちです。まさに数字の独り歩きなのですが、これを成果とするとしたら、行政の本筋の業務からは大きくずれているといわざるを得ません。こういった状態は、保護されるべき消費者にとっても歓迎すべからざることです。結果的に高いコストを払わされることになるからです。

新しい規制の形

改正割賦販売法も貸金業法と同じように、自主規制団体の設置について規定しています。自主規制団体を法律で規定することの意義は、本来行政が行うべき業務を自主規制団体が行うことによって、行政の肥大化を防ぐことにあります。ところが、自主規制を法律が定めた団体が行うことによって、過剰な規制が行われ、法律の肥大化が促進される懸念があります。一九六一年の割賦販売法制定を機に設立された割賦制度協議会は、その後社団法人割賦協会となり、さらに名称変更で一九八五年に日本クレジット産業協会となりました。

割賦制度協議会は、時代背景があるとはいうものの、産業育成を目的としていました。監督官庁である経産省が認めないと、協会名は変更できません。協会名を「日本割賦協会」から「日本クレジット産業協会」に変更できたということは、支払い停止の抗弁が導入された翌年の協会名変更ですが、監督官庁もまだ産業育成の使命は忘れていなかったものと思います。ところが「日本クレジット産業協会」は「日本クレジット協会」と協会名を変えて、認定割賦協会となりました。

消費者被害防止法に衣替えした割賦販売法に産業育成の視点はないわけですから、その法律が認定する団体ということで、「産業」は消えてしまったものと思います。認定割賦販売協会の会員は、クレジットカードや個品割賦を行う会員に限りますが、加盟店が行った「利用者等の保護に欠ける行為に関する情報」を得たときは、認定協会に報告することを義務づけられています。この業務は本来行政が行っていたもので、それを認定団体に下ろすということですから、認定団体への報告は行政のスリム化という意味ではおおいに意義がありそうに思えます。

ただし、現実はそうはなりません。例えば、金融庁は旧大蔵省から分離されて監督指導を専門とする役所になりましたが、一九九人年の発足時に四〇〇人だった定員は、現在は三倍以上になっています。経産省で割賦販売法を管轄するのは取引信用課という一つの課でしたが、現在は分掌の振り替え等があったにせよ、消費経済監督課と消費経済政策課の二つに分かれています。人数も増えました。自主規制は、名前のとおり認定団体の会員が自主的に決めたものです。その基になるのは法律です。法律の解釈は、認定団体の仕事ではなく、所管の経産省の仕事です。こういう構図なので、自主規制とはいっても法律を緩めるような解釈は絶対にできません。逆に、厳しく解釈する傾向になりがちです。

個品割賦の問題点

販売業者はそれにつけこんで、一度販売に成功すると、次から次へと商品や役務を勧めて契約していくのです。こういった契約にも個品割賦はよく利用されていました。消費者トラブルになつて発覚したときには、とうてい返済不能であろう非常識な金額になっていることも珍しくありませんでした。本来、消費者の信用を担保に契約するのがクレジットですから、返済不能な金額の与信はあり得ないはずです。正常に与信審査が機能していれば、加盟店を調査する必要すらないかもしれません。

ところが個品割賦の場合は、加盟店与信が堂々とまかり通る取引となっていたものですから、次々販売を行うような取引先を加盟店にしていたわけでした。従来の商慣行からすると相当厳しい内容といえます。次々販売は、法律用語では「過量販売」といいます。個品割賦はこの改正でクーリングオフができるようになりましたが、過量販売の場合は通常のクーリングオフの期間(八日)を超えて一年以内であれば申し込みを撤回できるようになりました。この規定に該当すると、すでに支払った分の返還が行われます。

つまり「既払い金」の返還です。法律改正以前に個品割賦がトラブル化すると、すでに支払った分の返還が争点になっていました。それを条文化したものといえます。ただし適用になるのはあくまでも法律不遡及の原則にしたがって、改正法施行後の契約に限られます。当時、貸金契約で利息制限法を超えた部分の過払い利息が、司法関係者の大きなビジネスになっていましたが、それに似ている部分もあるので「過払い」の次は「既払い」といった期待も一部にあったようです。繰り返しになりますが、これらの加盟店管理関連の規定は特商法関連の販売の際の個品割賦限定であって、クレジットカードには影響しません。

ただし改正法を検討した審議会では、店頭販売やクレジットカードでも同様の規制を行うべきとの意見がありましたから、今後も同じ状態が続く保証はありません。クレジットはこのような法環境の下に置かれ、世間の目は極めてシビアになつています。そういった情況があるので、クレジットカードの業界でも特商法関連取引であるエステティックについては、個品割賦とほぼ同様の対応をするようになっています。つまり、健全な経営をしているかどうかは問題ではなく、エステティックサロンとは契約しないというものです。

ページ移動